人生を変えたかも知れない本

 月刊「短波」という雑誌があった。海外の短波放送を聴取することを趣味とする人のための雑誌である。もっとも国内局や中波が取り上げられることもあり、現に私はNHKの局名アナウンスを何種類かに分類してレポートし採用されたことがある。私の人生の中で、研究の名に値するものはこれくらいであろう。

 それはさておき、その雑誌の特集で「エスペラントの放送を聞こう!」みたいなのがあった。エスペラントのことは小学校の国語の教科書で知っていたが、エスペラントで書かれた文を読むのは初めてだったし、ましてや放送を聞くのも初めてだった。私は人工語というからには、もっと意味を持つ記号の羅列みたいなのを想像していたのだった。乱暴なたとえで誤解を招くかもしれないが、手話みたいな感じだ。しかし文はアルファベットで普通に書かれており、ロシア語なんかよりよっぽどなじめそうな言葉に見える。北京放送にダイヤルを合わせ聞いてみたら、これまたスペイン語っぽくて明瞭な発音だ。

 私は「エスペラント四週間」を通販で購入し、早速勉強を開始した。このおかげで今まであまり理解していなかった「副詞」がどんな働きをするのかわかったのである。副詞は形容詞や動詞を修飾するのだ。「とても美しい」や「とても速い」のように。いやいや、そんな当たり前のことも英語だとわかりにくい。しかしエスペラントの副詞は必ず「e」で終わり、「a」で終わる形容詞や「i」などで終わる動詞を修飾する。これはわかりやすい。おかげで全然わからなかった英語が、大学に合格できるレベルまでは理解できるようになった。

 あの時の月刊「短波」は今でも取ってある。「エスペラント四週間」もだ。どちらも私の人生を変えたかも知れない本だ。あと「AT/PC互換機の自作本」もそうなのだが、これについてはまた今度。