百科事典

 私が大学生だった頃、電電公社がNTTに変わった。電電公社時代のNTT(変な言い方だが)はあまり広告戦略が得意ではなかったように思う。なんせお役所みたいな企業だから。「オレンジラインのテレ太くん」なんて覚えている人も少ないはずだ。安田成美がテーマソングを歌っていた。広島のそごうにPRで来てたので、歌っているのを見たことがある。思ったより歌は上手だった。信じてくれる人が少ないため、これは力説しておきたい。

 その頃、うちの実家が立ち退きを命じられ、私の祖父母と両親は引っ越しをして新築の家に住むことになった。大学生として実家を離れていた私も、引っ越しの手伝いのために帰省した。電話機もダイヤル式の黒電話からプッシュ式の新しいのに変わった。その新しい電話機の入ったダンボール箱を開けた時のことである。出てきた電話機は新品ではあったが、電電公社のマークが入っていた。

 広島の本屋で買った文庫本に「今月の新刊」のビラが入っていても、それが数年前のものだったりすることがある。うちはNTTから電電公社の電話機をつかまされたのであった。

 ところで、そんなうちの実家には平凡社世界大百科事典がある。全26巻だ。調べてみるとこれは1964-1968年版である。買ったのは1970年だったように思う。セールスマンに勧められ購入したものらしい。1972年版からは35巻に変わっているため、これも売りつけられたものなのかなあ。うちら何にも知らない田舎者だったから。あっ、今もそうか。