急いては事を仕損じる

 昔の人はいいことを言う。

 新幹線で東広島に行こうとした。もちろん東広島が最終目的地ではない。東広島駅から数分の接続でバスに乗り、安芸津からこれまた数分の接続でフェリーに乗るのである。

 家からバスで広島駅に向かおうとしたが、前のバスが出た後だったのか、12分待ち。次のバス停まで歩いて時間を潰し、バスに乗った。広島駅前に着いたのだが、そこは福屋の前で、改札まではまだまだ歩かねばならぬ。半分走りながら切符を買い、新幹線の改札を抜ける。ここで12時3分発の新幹線には間に合うと確信したため、調子に乗って「たこめし」を買う。エスカレーターを上ると、いつもの14番ホームに停まった新幹線が見え、発車のベルが鳴る。仕方がないので駆け込み乗車を試み、そして成功。

 あーあ、あと5秒、弁当屋さんがもともたしてくれたら、この新幹線に乗らずに済んだのに。

 それは12時3分の「こだま」ではなく、6分遅れの「さくら」だった。「こだま」の7号車は自由席であることが多いのに、「さくら」は指定席だし、座席の並びも違う。すぐにやっちまったことに気づいた。最初の停車駅は福山。そこから東広島に引き返すには小一時間待たなければならない。潔く広島まで帰り、今日の旅行は中止となった。旅行といっても実家に帰って老いた母親の顔を見るだけなんですけどね。

 広島駅で払ったのは、東広島から引き返した運賃のみ。つまり往復運賃のうち、東広島から福山の分は勘弁してもらえました。元はといえば「さくら」が遅れたことが原因だ。でも、私の不注意も相当なもんだから、こんなもんでしょう。