石屋の思い出

 小学校四年の時に引っ越しをしたのだが、そこの近所に石屋があった。御影石を削って墓や墓誌を造るのである。その石を削る音がうるさいのは当然のことだったが、あまり気にならなかった。「勉強の邪魔!」だとは思わなかったのだ。どうせ夜になると静かになるし。一方、そこの仕事場に電話がかかってくることがあり、その着信音は作業中でも聞こえるように大音量であった。私はこちらの音はうるさく感じ、「早く電話出ろよ」と苛立っていた。

 道路の拡張で実家は私が大学で外に出てる間に位置が変わった。石屋も立ち退きの対象となり、どこかへ行った。どこに行ったのか、わからない。

 今はJRの線路の脇に住んでるが、慣れてしまえばどうってことはない。ただ、夜間の工事の時には目を覚ましてしまうことがある。その時は耳栓に頼る。一方で草刈り機の音や、電動ノコギリの音は昔から嫌いで我慢がならない。これらの対処法としては防音用のヘッドホンを用意している。

 電動ノコギリで木を切る音を聞きながら、石屋の音の方がよっぽど大きくて耳につく音だったのに、どうして気にならなかったのだろうと不思議に思う。