アパルトヘイト

 「アパルとヘイト」ってどっかのお笑いコンビが名づけてそう。「アリスとテレス」も。まあ、それはともかく、曽野綾子アパルトヘイト発言である。

 曽野綾子の「哀歌」という小説には、ルワンダでの部族間の憎しみをマスコミが煽り、カソリックの司祭までもが虐殺に参加する様子が描かれている。その司祭は顔と身分を隠すために、バナナの葉で全身を覆っており、「バナナマン」と渾名されているのである。

 高校の頃、「誰のために愛するか」を図書館で借りて読み、衝撃を受けた私は文庫本まで買った。それ以来、曽野綾子のエッセイは好きである。

 今回のアパルトヘイト発言は、思ったことは書かずにはいられない彼女が、まあ「書いちまった」ものなのであろう。曽野綾子はアフリカ通だと思うし、差別も何も、黒人が嫌いだったら、あんなにアフリカを訪れないはずだ。

 ただし、あの発言はいただけなかった。世の中には黒人が嫌いな人間がたくさんいて、迂闊な発言に対しては容赦ない攻撃が来る。彼らは自分が黒人嫌いなのを隠すために、人種差別反対の発言を繰り返すからだ。いや、これは私の言いがかりに近い推測なのだが。 

 私だってどこかの作家が、「在日ブラジル人は電車に乗るな!」などと書くと、反論してしまうことだろう。そりゃ熱心に反論するさ。これじゃ、まるで私がブラジル人を嫌いみたいじゃないか。まあ、そうだけど。いや、私が嫌いなのは電車に乗るブラジル人だけだ。しかも、広島県山陽本線だけ。

 何はともあれ、曽野綾子が謝罪するところなんか、見たくもない。かといって、抗議している連中の方が正当なのは、如何ともしがたい。困ったものだ。