「言語」という雑誌

  昔、「言語」という月刊誌があった。言語学に関する話題が満載の雑誌だった。あるアイヌ語の研究者が書いた文章に、「クラスの中に二三人アイヌ人の生徒がいた頃の話」があった。それは日本人の高齢のおばあさんの経験を聞き取ったもので、アイヌ人生徒は民族衣装を着てアイヌ名を名乗り、風呂に入る習慣がないので日本人(大和民族の)の生徒からいじめられていたのだそうだ。

 だけど、学年が上がるにつれアイヌ人生徒は和服を着るようになり、日本名を名乗り、風呂に入るようになったけど、やっぱりいじめられていた。いや、ごめん。私は話を面白くするために、ちょっと話を盛ってしまいました。

 クラスの中に二三人アイヌ人の生徒がいる、という状況が私の胸を切なくさせるのだ。歴史の針がそこで停滞しておれば、民族衣装を着てアイヌ語をしゃべるアイヌ人生徒が、今でも北海道のどこかの小学校で見られたんじゃないのか、と思うのだが。

 だからといって、私がちょんまげで学校に行きたい、という意味ではない。