侘しい宿

 先週泊まった温泉旅館は窓を開けると虫が入って来るような山の中にあった。私は田舎の人間で木造家屋にはこうした虫が入って来ることには慣れている。しかし、トイレの壁にまあまあの大きさの蛾が張り付いていたりすると、正直やれやれと思う。慣れているからといって、平気だとは限らない。人間、雨には慣れていても、農家でもない限り、雨をいとう人は多いのではなかろうか。

 宮脇俊三の鉄道旅行記とか、つげ義春の旅行漫画を読んでいると、何となく侘しい宿に泊まった時の切ない雰囲気が描かれているが、虫に関しての記述はないように思う。虫を毛嫌いしてたのは、小林よしのりだったか。彼らが私の泊まった温泉旅館を訪れたら、どんな感想を抱くのであろう。