肌の色の認識

 金曜日の夜、バスを待っていたら向こうから黒いヘッドホンが歩いて来た。よく見たら、ヘッドホンをした黒人男性だった。

 黒人男性の肌の色は黒いので、夜は目立たない。でも、ヘッドホンだって彼の肌の色とは違うけれども黒は黒なのだ。

 たぶん、私の脳は人間の肌の色はこんなもの、だと思っていて、暗い場所だと黒人の肌の色を認識しないのだと思われる。一方、ヘッドホンはだいたい黒だと思っているため、認識できたのだ。

 そういえばこんなこともあった。夜中、向こうから腕を後ろに組んで歩いて来る人が見えた。しかし、腕の組み方が何だか不自然なので、私はつい凝視した。季節は夏、相手は半袖のポロシャツである。

 その人は両腕がなかったのだ。あまりにもじろじろ見たので、気づいた瞬間から目を伏せた。