記憶は嘘をつく

 もう20年ぐらい前になると思うのだが、沖縄に一人で行ったことがある。ちょうど県内各地で市町村議会の選挙が行われていた。私は沖縄本島の南部にある平和祈念公園から那覇にバスで戻ったのだが、その中で選挙速報をラジオで聞いたのである。いや、少なくともさっきまでは、「聞いた」と思い込んでいた。

 パソコンやスマホNHKのラジオ番組を聞ける「らじる★らじる」というアプリがある。「東京、大阪、名古屋、仙台」の放送局から選んで聞くことができるのだが、今年の統一地方選の時、名古屋の局の放送に選挙速報が入りまくり、翌週に番組のMCがちょっとぼやいていた。名古屋の選挙速報といえば、新幹線で「真打ち共演」という番組を聞いていると、落語のオチの部分で愛知県の聞いたこともない市長選の結果が入り、結局わけのわからないまま終わってしまった経験がある。

 そんなことを思い出すついでに、私は沖縄で聞いた選挙速報のことまで思い出したのだった。そこで私はつい自分の記憶を疑った。私がバスに乗っていたのは昼間である。選挙の開票は夜の8時に始まりはしないだろうか? 私がバスの中で選挙速報を聞いた、というのは有り得ない話だ。

 だから、自分なりにこの現象を解析してみた。色々と思い出したのだが、私はホテルの枕元にあるラジオを聞いたのである。選挙速報ではなく、選挙特番だった。沖縄ばかりでなく、田舎には同じ名字が多い地域がある。その時の選挙でも同姓の候補者がおり、名字だけ書かれた投票用紙の一票は、同じ名字の候補者に按分されるのだった。

 この話、やっぱ面白くないのでやめた。